4月30日(土)ささやかな同窓会

きのうはささやかな同窓会だった。アーツ千代田でH君がグループ展に出していて、じゃあ、そこで集まろう、と、コロナ禍だからあまり声をかけなかったけど、私とあと二人が来た。

そもそもはMちゃんが帰国して、それで集まろう、ちょうどH君のグループ展だし、ということだったんだけど、Mちゃんは都合が悪くなってしまい、来れなかった。
雨だった。10:50に御徒町改札でYちゃんと待ち合わせた。私はちょっとまえに着いて、駅近のモンベル店内を回遊したが欲しいものはない。

無事Yちゃんと会えた。この時はどうもどうもと軽く挨拶して会場に歩いて行った。実際に会うのは、何十年ぶりだったと書いていて思い返した。去年、zoomで見ているからかな。アーツ千代田3331は初めてだ。旧錬成中学校を改装したとあった。入り口は 混んでいた。催しもの?イベント?「ココカラ市場」が一階と二階で開催されていた。学生のような若者がスタッフだ。建物と相まって高校の文化祭の様相だった。メールしあってKちゃんと会えた。Kちゃん、久しぶり、と、Kちゃんとも十年ぶりくらいのはずだが、手短にあいさつを交わして、3人で会えたはなやいだ空気を少し保ちつつ、ギャラリーに行った。
展示はすべてはがきサイズの作品だ。入ると女性がいて、隣の部屋にも展示されているからどうぞ、と英語で言った。英語圏の人とは、マスク越しのせいか、初見ではわからなかった。
時間をかけて一通り観た。H君の作品を見に来たんですよ、一種の同窓会なんです、と画廊の彼女に言ったら、おお、この展覧会はシドニーの同じ美術の学校出身の作家がプロヂュースしたんです。私はシドニーから来ました、と言い、飾られた簡略地図の絵を示して、世界で6か所を巡回してここが最後、今日が最終日です、と言う。シドニー、ニューヨーク、パリ、ヨハネスブルク、香港、そして東京。南アメリカ大陸ではやってなくて、この地域でやりたい、とも。なるほど、南アメリカ大陸にマークされたところはない。皆さんは、作家ですか、と聞かれた。わたしは、どう、作ってる? とYちゃんとKちゃんに水を向けた、返事なし。いいえ…、と彼女に答えた。COVID-19の影響はありましたか、と聞いたら、香港から東京に来るのに2年間あきました、と答えた。

作品は、H君のが一番に目に飛び込んで来た。作品を知っているからだろうか。どの作品も、サイズの小ささにゆるむことなく、個性が現われ密度が濃い。6か所の地域ごとの展示だったけど、個性は地域を超える。地域ごとの特色を見出そうとすれば、おおざっぱにくくれないことはないけど、そんなのささいなことだ。私は、絵というより、ものとして提示されている作品に興味を惹かれた。Hくんのはもちろんいい。でもこれだけ多様な作品があると、物っぽい方が好みなんだな。

美術は世界共通だね、作品を観ながらYちゃんが言った。これなんか八っちゃんぽいね、そうそう、このへんなんか、と軽口をたたき合った。

画廊を出るとKちゃんが建物の中をもうちょっと見たいというので、二階の講堂だったようなところで開催されている文化祭をみて、画廊をもう一つ観た。画廊がたくさんあったけど、休みのところがほとんどだった。屋上に庭園があるのを目ざとくどこかで見て知っていたKちゃんが行きたがってエレベーターに乗った。テニスコートやバスケコートのペンキが塗られた屋上の1/3くらいの範囲で、枕木で長方形に囲われ土が入れられたところに、低い丈の何かが思い思いに植わっていた。素人の家庭菜園といった体だ。学級花壇だったみたい、クラスでピーマンを育てよう、とか、Kちゃんが言った。

建物の外に出た。雨がけっこう降っていて、風もある。寒い、とKちゃんが言った。どこかでお昼を、と歩いて、めぼしいところがなくてとうとう上野まで来てしまった。丸井の無印のレストランに入った。

Kちゃんが饒舌だった。親御さんの介護をするために故郷に帰った。親御さんが亡くなり、ひとり暮らしになった。仕事も始めた。医院の待合室とか仕事場で、○○小、○○中だった?と聞かれることがある。目の前の人は、ああ、あいつか、と思うそうだ。東京で生涯学習支援の仕事をやっていて、故郷でも似たような仕事に就いた。今は学芸員の資格がほしいそうだ。資格があれば、もっと内容に携われる。通信教育で取りたいと言っていた。通信教育を、何度も通販と言い間違えていたのがご愛敬だ。たいへん精力的だと感心した。Yちゃんはパンクファッションだ。ポリシーのある存在感が感じられる。Kちゃんの話を聞いて刺激になって、また漫画日記を始めようかなとYちゃんは言った。3年くらいまえにやめた。落書きで字なんか自分でも読めないくらいなんだけど。

Yちゃんは続ける。最近、昔に戻れるとしたらいつがいい?て聞かれるんだ。仕事先の人やパートナーから。私は過去には絶対戻りたくない。今が一番いい、と言い切る。Kちゃんは、私も今がいい、あ、今のままで戻るならいいかもしれないけど、と言う。そう、みんなそう言うんだよね、いまの状態で戻るならいい、って、とYちゃん。えー、過去って、江戸時代とかじゃなく? と私。違う違う、自分の過去のどこか。あ、やっぱり私は18歳かな、建築学部に入りたい。卒業したら建築士1級がとれるんだよ。なんでそっち行かなかったかなあ、とKちゃん。

なんかさ、ファウストがわかるなあ、と思うようになって、と私。悪魔に魂を売って若者になるって話。その話を思いつくのがねえ。――昔は資格とかあまり考えなかったよね。と最後は話をKちゃんに寄せる。