7月16日(土)映画「WANDA」、ライブ「清岡秀哉・宮本善太郎」七針

「WANDA」覚書  

ワンダがそばに立って見ていて、男が車の屋根に立って空を飛んでいるラジコンに「こっち来い」と叫んでいるシーンが特に良かった。空の水色、男が、より良き人生よこっちにこい、と呼んでいるみたいだし、ワンダがその場にいて、男と束の間レジャーの真似事をしているみたいな気分になっているのかもしれない、と思えた。
相手が離婚したいのだったらそれでいいです、と裁判所で離婚に応じ、わずかなお金を映画館で寝ていたときに盗まれる。ビールをおごってくれる人についていき、ホテルで朝を迎える。お金も住むところもない。ベッドをともにした男性が泥棒とわかっても一緒にいる。
離婚、これするな、髪型、着るもの、言われると受け入れる。たぶん、自分には足りない物がたくさんあると思っていて、言われて受け入れるという態度が染みつている。受け入れるのを周りから見ると、中身がない、ということになる。中身がないなら、よその人が言ったことなどを真似して、中身があるふりをしそうなものだけど、そうはしない。
受け入れて、流れていく。盗みながらモーテルに泊まる生活だけど、男といれば、食いっぱぐれはない。尊重されることがない。けれど、離れない。

ラジコンに手を振るシーンは、男性が個人の顔を見せ、ワンダが束の間だけどよくいえば心の休息を得たと思えたので、私にはよかったのかな。

ワンダは美しい。その美貌が荒い画面で途方に暮れたような複雑な表情に、惹きつけられる。

そういえば、はじめのほうの、鉱山を歩くワンダを遠くから映しているシーンも、強く印象に残っている。

 

 

日記

きのうは、朝、事務仕事を片付けて、昼頃、カモシカスポーツへ。クライミングシューズのスクワマと、ツェルト用のペグと 厚手の靴下を買う。
今使っているインドア用のスクワマと外岩用のインスティンクトは、もう少し履いてからリソールに出すつもり。外岩の予備にしているソリューションやカタナレースはちょっとサイズが大きいし、足の形があんまり合わない。結局スクワマとインスティンクトが今のところ私のベストだ。
高田馬場駅近くのタリーズでお昼を取り、渋谷のイメージフォーラムへ移動。映画「ワンダ」を見る。たいへんいい映画だった。

表参道駅へ歩く。大雨が降っている。傘を差してもザックが濡れる。大手町駅で降りて、5時ごろ。スープストックトウキョウで雲南豆豆腐スープと全粒粉パンで早めの夕食を取る。5時時半、オアゾジュンク堂丸善に入る。福間健二「休息のとり方」とルシア・ベルリン「すべての月、すべての年」を買う。6時半ごろ、茅場町駅へ移動する。地上に出ると、結構な雨が降っている。地図を見ながら霊岸島へ、七針に着く。あたりは暗くなってきている。まだ7時の開店時間まで20分くらいある。周りを散策する。橋が見えて、行ってみたら中央大橋だった。川の方に下りると新川公園(隅田公園テラス)らしい。時間がそれほどないから行かなかったけど、面白そう。自転車で横切る人が居た。戻る。和菓子屋も探してみたかったけど、また今度。
七針では「清岡秀哉・宮本善太郎」ライブ。ギター独奏清岡秀哉、ドラム独奏宮本善太郎。

7時を過ぎていたので、「七針」と表札のあるドアを開けたら、中から人がでて来て、あ、七針のお客さんですか、と、ちょっと驚かれた。その人は入り口にいたほかの人と親しげに挨拶を交わしていた。階段を入ると地下室だ。赤いビロードの布が一面の壁に下がっていて、客席から見てステージのバックになっている。その前のスペースにギターやドラムセットなど楽器やアンプ?が置いてあり、小さい背もたれのないイスが10個くらいばらばらに置いてあって、壁についているベンチもある。小さい椅子にひとりとベンチに一人座っている。客席の奥の小机にもう一人いて、スタッフかオーナーみたいだったから近づいたら、机上の紙に予約者リストがあった。名前を言ってお金を払った。中2階にトイレがあり、一階で飲食できると伺った。トイレを借りた。あとから数人入ってきて、奥の人とはなしている。わたしは、真ん中の端の背もたれのある椅子にした。雨でザックとズボンのすそが濡れていた。

また人が入ってきた。皆さんお知り合いのようで挨拶したり消息を聞いたり談笑している。スマホやカメラを三脚立ててセットしている人が二人いて、ちゃんとしたっぽいカメラのひとは、奥の人と話していたからスタッフというか頼まれたかんじだった。端の背もたれのある椅子に移動する。
だんだん人が入ってきて、10人くらいだ。客席のまんなかあたりに座っていた人が前に出て、ギターを持って演奏が始まった。清岡秀哉だった。

音が今、生まれる。空気の中から音楽が生まれた。山、湖、水中、夢、を曲順で、想起した。音楽をつけるとしたらこれか。次は情動を引き出される曲。最後の曲、心地いいノイズが万華鏡のように開いていく。15分(?20分?)の休憩。一階でなにか、ビールかな、瓶を買ってきて、ラッパのみする人数人いた。私は、ずっと椅子に座っていた。後ろの人がなにかカップの飲み物をこぼした。次の朝、洗濯して干すとき、白いシャツにしみがついていたのを見つけた。漂白しても落ちない。
宮本善太郎のドラムソロは、スティックでそっとドラムに触ってかすかな音が出る。小さい太鼓(というのかな)やシンバルをそっと触っていく。そして、その行為を違う種類のスティックでやる。音が生まれる瞬間を味わうのか、と思った。最後、ひとりのギターボーカルが加わって、1曲だけ曲の演奏としてドラムでたたいた。音楽に合わせて体全体で踊っているみたいだし、腕の振りが早すぎて見えないくらいだ。ドラマーとして先に演奏の腕の振りがあるんだろう、さっきのパフォーマンスは、演奏の腕の振り軌跡の源に還ることかな。

9時20分ごろ終わる。一息ついてゆっくり席を離れた。私が最初に動いた。他の人はすわったままだ。お仲間でなにかあるのかもしれない。階段を上がり外に出ると、雨がやんでいた。