5月1日(月)阿部朝日さん個展 ブイあるいは灯台

きのうは、一日雨という天気予報だったので、筑波山に登るのをやめる。T夫も、雨降り日曜、ということで農作業がない、笠間での朝日ちゃんの個展をいっしょに行くことにした。晴れていれば、ひとりで筑波山を登ったのち個展に行くつもりだった。
最近買い替えたT夫の車に初めて乗る。T夫にとってもこの車で初めての遠出だ。彼は運転しながら、

「またいた、7台目だ」

とか言う。同じ車種に目が引きつけられるらしい。わたしは車種が見分けられない。

「この車、人気なんだね」

と愛想を言う。

午前中遅めに出発した。連休中だが、雨のせいか道は混まなかった。笠間市蕎麦屋で昼食をとる。私は品書きをひととおり見て鴨南蛮蕎麦にする。結局選ぶのはいつもこれだ。

「いいけど鴨南蛮の食べ比べなの?」T夫が言う。彼はシラス丼付き蕎麦セット。
1時ころ画廊に着く。建物に入ると、奥の喫茶部に朝日ちゃんが顔を出した。久しぶりいと言いながら、5メートルくらい離れて、ハグの身振りをしあう。5年、もっと?10年ぶりか。変わっていない。

作品は、ふたつ床に置いたのがあったが、ほとんどが、壁に展示されている。おなじかたちのピースの一部を溶接して全体の形を作る鉄の作品だ。ピースは厚さが3ミリくらいだろうか。微妙に色の差をつけているが、緑なら緑の色が単一で塗られている。作品ごとに緑、ピンク、藍色、銀色など明るい色だ。素材が鉄でも、壁にさしたピンに作品の裏をひっかけて設置することがきる。印象も軽い。

朝日ちゃんは、作品の説明をするとき、腕を振る。半月を描くようなストローク。デッサンする腕の動きが作品かたちを見出していくように思う。漠然とこういうのを作りたい、頭にあるものを、空中の紙に線を描いて形をさぐり、鉄のピースを作り溶接しながら決めていく。

 

朝日ちゃんの言葉覚書

作品は物だから、できてしまった形とできない形がある。当初のイメージと物との違いがあり、そのなかに新しい発見を見出すこともある。作りながら、それらを制御したり、くみ取って伸ばしていく。重量を重たくしすぎないという制約も自分の中にある。

作っていて、なかなか納得する形にならなくて、裏にフックをつけるとき、角度を20度くらいずらしてみたら良くなった、という作品もある。天地の軸の角度を変えると、同じ形でもこれ以上ないように決まる(よくなる)こともある、と発見した。

 

リラックスして作りたい、とも言っていた。

自分のくせがある。ピースをたてに重ねる際は右左右左と対称に作ってしまう。
作ってきて最後のほうになると、アートから完成度へと方向が変わってつまらないものになってしまいそうになる。もう少しリラックスして、癖や完成度へ向かわないようにしたい。

 

1人で建てた家に住んで、畑で自給しながら作品を作っている朝日ちゃん。フィラデルフィアに留学後、ベルリンで10年ほど過ごしたあと帰国した。その後も真摯に作品を作り続けている。

彼女に会うと、自らが照らされる。正しい姿勢を思い起こさせる。位置を知らせる海に浮かぶブイ、あるいは灯台のような人物だ。

 

喫茶部でおいしいハーブティを飲んだ。