4月5日(火)トルコタイル教室その2

きのうは、昼間は小雨が降っていた。手賀沼のほとりのカフェで待ち合わせてM氏とランチした。お店の入り口に値段のついた手作りのアクセサリーが壁に吊るしてあった。売っている。5月に庭で開催されるフリマのチラシも張ってあって、M氏はスマホで写真を撮ってた。

そろそろこういうこともできるかな、と思ってね、とカウンターの中の店主が出てきてM氏に話しかけた。年配の女性だ。今日はどちらにいらっしゃるのですか、と聞かれて、M氏は、この前来た人がやっているタイル教室に行くんですよ、M氏は前回作ったトルコタイルを手提げから出して、笑顔でお店の人に見せた。あらすてき。焼くのたいへんでしょ、こういう色を出すの。いえ、焼くのは先生にやってもらうんです。絵付けだけなんですよ、私が答えたりした。

M氏が持っていたことと、見せるんだ、へえと思った。クールなM氏と思っていたので、ちょっと意外だ。タイル絵付けがよかったんだな、M氏。私も楽しかったけど。道の駅でニューオオクボのパスタと金山寺味噌とバタールパンを買い、トルコタイル教室へ行く。

14時まえ、ちょい早めに駐車場に着いた。K氏の車もほどなく来た。

教室の建物は、先生の自宅を改装したものだ。ドアと通りに面した窓がガラスの格子で、喫茶店みたいだ。なかに入ると、床はコンクリで、窓の手前に窓と同じ高さの棚がある。上にトルコタイルやトルコ刺繍「イーネオヤ」がぽつぽつ飾られている。あっ鳥、この鳥、いいですね、これ描けませんかねえ。K氏は鳥が描かれた20センチ角のタイルがいたく気に入ったようだ。部屋の壁は木材が横に張ってあり、額装された作品が飾られている。表面カバーのある額装と、タイルはカバーのない額装もあった。トルコタイルは、20センチ角タイルの18枚組が一番大きな作品だ。やかんを乗せて温めることのできる円筒形の石油ストーブと続きの部屋にファンヒーターがついていて、部屋を隔てるドアが少し開けてある。
私たち教室の作業机は自然木の一枚板だ。10センチくらいの厚みがある。机の横が幹の木肌でなだらかな斜面なので手首を置きやすい。机の上には透明の飛沫防止パネルが置いてあり、ひとりひとり区切られている。

私以外のM氏とK氏は前回と同じ図柄にして、色を変える。私は、前回と違う図柄にする。前回と同様、幾何学的なのを選んだ。M氏はチューリップ、K氏は魚の図柄だ。

あらかじめ用意された図案例から薄紙にシャーペンで図柄を写す。色鉛筆で紙に試しに塗って、色を決める。陶器の絵の具の色はトルコタイルの伝統の赤、コバルトブルー、薄いブルー、緑、の四色で、塗らないところの白を入れて5色が使える。プラス、枠線は黒だ。薄紙には、図柄の線に沿って針でぽつぽつ連続の小さい穴をあける。タイルに薄紙を載せて、黒鉛の粉をポンポンで落とし、タイルに下絵を写す。絵の具を筆で色を塗る。黒の枠線を先に描いて、次に面を塗る。

M氏もK氏も前回使った薄紙を再度使えるので、ポンポンのところから、私ははじめからだ。先生が、トルコのハーブティを入れてくれた。カモミールっぽい香りだった。

時折激しく降る雨音が聞こえた。私の作業がほかの二人より遅れているので、窓を見ることなく手元を見て作業をしていたが、暖かい部屋で聞く激しい雨音は、これから面白い物語がはじまる期待と物語に浸りこむ悦楽(!)の予感がうっすら呼び起こされて、なかなかいい感じだった。
隣の部屋は、先生の作業室だ。私たちが絵付けで1時間半も経ったころ、同じ姿勢でいるのに疲れてちょっと部屋の中を歩いていたら、隣室を見せてくれた。道具と塗りかけの大皿が数枚あった。数枚を並行して作業を進めている。0.5ミリのシャーペンで描いたみたいな細い線と塗られた面。すごい。筆を垂直に立てて塗ると幅が均等の細い線が描けるのだが、素人は曲線のところがそううまくいかない。自分用だからいっか、と独り言が出る。私、独り言多いですかね、と言ったら、大丈夫、聞いてておもしろいから、とM氏が言った。

4時半くらいに、K氏が絵付けをおわらせた。K氏は額装したいと思っていて、それなら3つ一緒に並べたらどうかという先生の言葉に、その気になり、先生が示した図案集から鳥の部分を抜き写して、色を色鉛筆で色の構想を練っていた。M氏もぼてっとして塗りにくい赤をきれいに塗りつけて終わらせた。私も、輪郭線を描き入れたら、面で塗るところが割に少なくて、M氏のあと、ほどなく終了した。今月中に焼くかもしれないとのこと、楽しみだ。5時半くらいに教室を出た。雨がけっこうしっかり降っているのね、M氏が言った。傘を車に置いてきた私は速足で車に向かった。