1月27日(木)父の面会お見舞い みんな知っているのか

きのうは、10時―11時で体育館のリフレッシュ教室。終わってからトルコタイル教室で一緒だったK氏が話したいふうだったし、私も話したかったけど、「これから父のところに行くの、ごめん」「ああ、わあ、じゃあまた」「うん、またゆっくりお話しましょう」――緊急じゃなくて、K子と待ち合わせ時間を決めたのだけど、タイトなスケジュールだった。着替えて、電車に乗る。駅でK子と落ち合う。14時の面会に間に合う。


あらよく寝ている。父の部屋に入って、先頭の職員さんが言う。私とK子が後ろに続く。職員さんは、娘さんたちが来てくれましたよ。父の耳元で言う。あ起きた。食事は2割くらい食べています。わたしたちに笑顔で言った。ええ、ええ、ずっと寝てますからね、私たちは返す。もう充分ですというニュアンスをつけて。

 

来ましたよ。それぞれ自分の名前を言う。私に、あれ、だれかもう一人来なかったか、父は訊く。怖いんですけど、K子がいう。K子は父の枕に近い方に座っている、父は顔をあげないとみられないようだ。K子が父の顔に屈みこんで名前を言うと、おや、K子か、わからなかった。二人ともきてくれてありがとう。父が言う。そして、前を指さして、もごもご、うーうーと言って何かわからなかったけど、3回目くらいに、そこの腰掛を持ってきて座りなさい、ということだった。すでに、腰掛というか、椅子はベッドのそばに二脚おいてある。一つは新しいの。一つは昔から家でつかっていたもの。私が子供のころから食卓にあった椅子だ。老人は使い込んできたものに囲まれていたほうが安心するで、家から運んだ、と聞いている。
椅子?あるよ、座っているよ。もごもご、ここはどこだ。ここは老人ホーム、茅ヶ崎の近く。今何時だ。2時、と答えると、フーンという顔をした。家族みんなは元気ですよ。それは良かった。もごもご、おれがここに居るのを、みんな知っているのかな。みんな知っていますよ。フーンという顔。なんで来ることを知らせないんだ。前もって知らせてくれ。少しご立腹だ。今度来るときは知らせるよ。最近頭がね。あれ、俺の頭がおかしいのかな。父は左手で頭を側面から天頂にかけて撫でる。頭の側面には短く刈られた毛がまばらに生えている。そんなことはないよ。そうかあ、そうかあ、うなずく。今度は3日後に来るよ、K子が言う。明後日。土曜日じゃわからないか、明後日ね。いちにいさん3日後。父は指を折って2つ3つと数えて、わかったみたいだ。そろそろ帰るね、時間だから。コロナっている病気が流行って、うつらないように少ししかいられないの。コロナは知っている。じゃあと布団をめくって握手する。布団をかけなおす。

廊下で、案内してくれた職員さんに挨拶され、聞いてみる。あの、胸をトントンするのですが。いつものことです。ああそれは、という調子だった。

みちみち話す。元気だったね。私たちが来ることは職員さんが言ってくれていると思う。忘れるんだよ、K子が言う。うん、そうだと思う。ほかの人がお見舞いに来ないのは、みんなが知らないからだ、ということなんだね。K子が言う。おばあちゃんのことはどうなんだろう、生きていると思っているのかな、でも、おばあちゃんのことについては一切触れていない。なんとなく聞けない。うん。

何度か来ると、分かってくることがある。それは良かった。来てくれてありがとう、は、発声がしっかりしている。一回目で聞き取れる。言い慣れている(数少ない)文言なのだろう。言われてうれしい言葉だからかな、こういうのが頭に残ってよかった。

せっかく来たからお茶していこう。マクドナルドに入った。おのおの子どもたちが縁遠いことを嘆き合う。K子は結婚相談所を勧めた。お母さんが勝手に申し込んじゃって、と言えばしぶしぶ入ってくれるよ。お金がかかるけど、結婚できれば安いものよ。相談所は商売だから、お相手を見つけるよ。フーンなるほど。

次の日も面会お見舞いに行くことにしていたけれど、いささか疲れたので、やめておく。これが最後かと思うと会話を覚えておこうとしているけど、どうなのだ。

夜に帰宅した。