9月9日(水)わざとらしい会話の妙

 きのうは、午前は体育館でクライミング、午後はバイト。

ライミングに行く前に、群像10月号を買う。まだ今村夏子「嘘の道」しか読んでいない。理解力不足で、最後のところがよくわからなかった。ということは、全体がつかめなかったということだな。
 今村夏子は、前作の「とんこつQ&A」がすごかった。素晴らしかった。わざとらしい会話、もんきりの会話、典型的な関係、という、小説ならなるべく避けたい「わざとらしさ」を反転させた。そもそも世の中はわざとらしい。人間関係もうわべを整えればやっていける。相手がどう思うかは予測でいないから、型にはまっておけばよい、という地点に立つのかもしれない。
 見回してみれば、空疎な国会での応答、ネットのやり取りがリアルな世の中に蔓延した。ネットだと、顔色や感情や状態は伝わりにくい。そういう情報が伝わらないから、誤解を避けて標準例文みたいな感じになる。
 あるいは、英会話習得のため例文を覚える。それを、状況で繰り出せればいい。多分、母語を習得する過程でも、親が口にする言葉を真似してきた。例文を覚えることからだったと思う。だから、例文を使ってやりとりをする主人公をえがいたこの小説は精妙なのだ。わざとらしさの境界がかすんでくる。