5月3日(月・祝)清掃作業

きのうは朝8時から、地区の清掃作業に出た。地区は7つの班に分かれている、うちの班はいつも塚の掃除を担当する。そのあと、地区の集会場周りをすべての班できれいにする。
塚は、背の高い木々と竹が群がり立っているなか、車が一台通れるほどの舗装道から幅5メートルほどの踏み固められた小径を100メートルほど奥に入ったところにある。背の高い木々と竹に囲まれて昼なお暗い。塚のすぐ後ろに大人が両手でかかえるほどの太さの大木が生えている。昔、お供えで地面に刺した木が大きくなったということだ。塚の上に張り出た木の枝に、黒いしつけ糸が一巻き下がっている。一本糸を取って手首など農作業で痛めた箇所に巻いておくと、痛みが取れるという言い伝えだ。ご利益があったら、お礼に糸一巻きをかけておく。このさがっているのがお礼の糸かどうかは知らない。遠目に髪の毛が引っかかっているかと一瞬思った。近づくと糸とわかる。
塚の周りの落ち葉を掃いて、一か所に集めた。石造りの柵に生えた苔をこそげ落とした。風に吹かれて、木立の根元に積もった枯葉が飛んで来る。竹箒で掃き返した。
集会所に行った。入り口の雑草を抜き、枯葉を掃いた。花をつけた椿の木が3本ある。花の色はそれぞれ、赤と、濃いピンクと、白い斑の入った赤だ。根元に花がボトボト落ちている。落ちた花も退色していない。地面も赤、ピンク、斑入り赤、の花で飾られているみたいだ。
「武士は、首が落ちる連想から椿を嫌ったのよ」子供のころ母から聞いていた。椿は花ごとぽっくり落ちる。桜みたいに花びらは散らない。武士には嫌われようが、掃きやすくていいじゃないの。花ビラが散らないから、まとめるのが容易だ。桜は、散るとき花びらがちらちら回りながら落ちる。花が空気中にあるさまを楽しむ。桜のように命を散らすという美学が太平洋戦争のときにあった。今は、元気でいて突然ころり、と椿を読みかえてもいいんじゃないか。
男性たちは10人くらい、草刈り機をおのおの持ってきて、ウインウインと草を刈っている。音が何重にもなって響いていた。女性は、班の持ち場をやっているか、持ち場をやり終わって帰ってしまったか、集会所までは来ていない。
見知らぬ男性が二人、集会所の入り口に来た。若い方の男性はもっていたリュックを下ろして、清掃作業を見ている。年上の男性は、ファイルを持っている。二人ともたぶん自然保護活動NPOみたいな名称のひとたちだ。「今日はみなさん掃除の日なんですね、すごい熱心ですね」若い方が年配に話しかけた。草刈り機をウインウイン鳴らしているおじさんたちのことらしい。
草刈り機が止んだ。おじさんたちは集まっておしゃべりしていた。もう作業はおわりだろう。私は、お先に失礼します、と、声をかけて帰った。