10月28日(木)父と面会「民」

きのうは、父の面会に行った。午前中は、山道具屋で買い物した。予約した時間が15時半。妹のKと14時50分に駅に待ち合わせた。
妹と20分前に老人ホームに着いた。父は元気だった。父は縦に首をこくこくさせて調子を取りながら、ゆっくりしゃべりだす。
宮沢のグループを作ろうと思うんだ。女性はダメ、いや、結婚していればいいか、結婚していないとグループに入れない。
え、宮沢? Kが言う。
ああ宮沢、宮沢、田島か。田島のグループ。トモコもKも幹事になってもらいたい。俺のおじさん、お父さん方のほう。
私が尋ねる。親戚のグループって、どのへんから入るの? おじさんたちとその子供、Yちゃんとか?と私が尋ねると。
俺の兄弟、M、T、E、Tと、兄貴のとこのYと…。
Tさんは亡くなっている。Eさんは病気で寝ている。さすがにお兄さんのSさんが亡くなってYちゃんが跡取りということは、分かっているか。H叔母さんの名前は上がっていない。父がまだ続ける。
結婚してないと田島の民に入れない。
民と聞いて、私は噴き出しそうになった。
今はコロナだから、病気が流行っているから、集まれないよ。コロナが無くなるまで待っていてね。Kが言う。Kはグループ作りを、会食の会と思ったらしい。私は、出自を懐かしがって、より身近に感じていたいんじゃないかと思った。それに、遠い親戚を自慢したいというのも多少はあると思う。
幹事をやってくれるか。
うん、うん。私たちは、不承不承返事をした。
もう一つ聞きたいことがあって、Kはどこに住んでいるんだ。父が言う。言い方はしっかりしている。以前来たとき父は、私たちが子供のころ住んでいたところに、Kが今住んでいるのかと思っていた。
Tだよ。
どこだ。どこに住んでいるんだ。父にTがわからない。
Tだよ。Kはそっけなく言う。ゆっくり丁寧に言っても言わなくても分からなときは分からない、分かったところですぐ忘れてまた聞かれる、とKは思っているのかもしれない。
時間になりました。と職員さんが入ってきた。面会は15分間と決められている。
職員さんに車いすを押されながら、住所を教えないなんて、と怒り出した父は、Tだよ、とまたKに言われて、あ、Tか、と思い当たった。
老人ホームを出て、民っておかしかったね。もぉ、結婚してないとだめなんて、ひどいよね。グループの話、この次来たとき、覚えているかな、とKと笑い合った。