7月9日(木)父と面会

 きのうは、父のところに面会に行った。父は老人ホームでお世話になっている。前回行ったのは今年1月6日。毎月一回くらい行こうと思っていたが、2月になってインフルエンザ流行のために、老人ホームが2月29日まで面会できなくなった。面会禁止は3月になって新型 コロナで3月27日までということになり、それが伸びて、4月7日の緊急事態宣言で5月いっぱいくらいまで様子見となり、宣言が5月25日に解除になると、面会は、6月は老人ホームの指定した2週間内で希望日を申し込むシステムになった。まだ都県をまたぐ移動の自粛期間だったので、やめておいた。移動自粛解除が6月19日。7月も指定された2週間のなかでの希望日申し込みのシステムだった。一週目に申し込み、時間が指定された。持ち時間は15分。半年ぶりに会える。一月に会ったのが最後だったらいやだとも思っていた。しかも、きのうは父の誕生日だ。
 手土産にクッキーとゼリーを買っておいた。クッキーは施設の方々へ、ゼリーは父へ。認知症だし一人では動けないから、なにか物をプレゼントしてもそれを使うということはないだろう。もう物なんかしょうがない、部屋に置ても来歴は多分忘れるだろうし、何かわからなくなるかもしれない。もっと前に、いろいろしとくべきだった、かもしれない。でもできなかった。離れて思えば父を堪らなく好きなのだけど、というようなことを、数日前からときどき考えていた。
 そして、きのう、当日になって、バースデイカードを作ろう、と朝の家事をしながら思いついた。色紙を買いに行った。結構種類がある中で、約15センチ角の正方形が二つ分の長方形のものにした。真ん中を折って二曲一隻。机とかに置きやすいだろう。父の似顔絵と私ら姉妹の顔を描きこんだ。ペンと色鉛筆で一時間くらいで仕上げた。
 二時間半かけて老人ホームに着く。手指の消毒と検温を済ませ、1階の面会室で待つ。父が車いすに乗り介護の人に押されて入ってきた。お誕生日おめでとう、と、ゼリーにカードを乗せて、机の上を父のほうに押しやる。机は細長い机3つを付けて、面会者と距離を作っている。ソーシャルディスタシングだ。
「それなんだよ、みんな間違えてる。ようかのはちじゃなくて、よっかのよん。誕生日は8月4日の95才。みんなが間違っていてもいいけどな」と父がいう。やや不機嫌そうだ。いいけどな、と言ったから、まあ許しているのだろう。父は自分の誕生日も歳も間違っている。ほぼ合ってるともいえる。姑も亡くなる少し前は年を多めに言っていた。年が多い方が褒められると思うのかも知れない。
「あら、じゃあ間違っているかもしれないけど、受け取ってください」と受け取らせた。
 夫や子供のことを話すと、だんだんわかってきて、仕事は何をしているんだ、などと言った。父が長く務めた会社の退職後に務めた会社のことや、いつも何しているか聞いたら、食事の時間が30分遅れたということを話す。多分、時差の分散で食堂に集まるのだと推察する。お墓に石塔を立てたいとも言った。15分を少し過ぎて介護の人が来て、面会はおしまい。連れていかれた。じゃあまた今度、石塔のことを話そうね。と言ってわかれた。
 石塔のことくらいしか考えることがないから、それを生きるよすがにできるよう、否定しない。生きる手助けになればと思う。